インポート

2005年02月14日

600本のバラ

 「義援金も義援物資も大変ありがたい。感謝してもしきれない。そして、豊橋市の愛好家の会から送られて来たバラの花には本当にみんな心和まされました」
 大水害に見舞われた兵庫県豊岡市の中貝市長は、そういって目を細めた。

 バラの花が、届いたのは去年の11月19日。10月20日の台風23号襲来から一ヶ月。ちょうど、被災者の疲労がピークに達したころのことだった。

 ピンクに真っ赤、黄色など色とりどりのバラの花は、600本。
  
 豊岡市では、さっそく、避難所に届けた。
 避難所になっていた公民館や体育館は、被災者自身がきれいにしていたし、ボランティアの人たちの手で整頓もされてはいたが、どうしても殺風景になりがちだった。が、バラの花がそれをすこしでも補う役目を果たした。

 水害で自宅に戻れない被災者たちは、避難所のあちこちに活けられたバラのパッとした明るさ、華やかさに、暗くなりがちな気持ちを何度も慰められ、心がじわっと温かくなり、胸が熱くなって、目頭を熱くした人もいた。

 災害は防ぐ手立てとともに、起こったあとのケアが最も大切であることはいうまでもない。
 バラの花が、水害の街に灯りを燈し、その街の人の心のケアに役立ったと、豊岡へ被害調査に訪れた国連環境計画(UNEP)のレポートにも記された。