「この浮いている小さな草のようなもの、何?」
「これ、コケだそうよ。それも、絶滅が心配されている、珍しいものなんだって」
「え、そうなんだ」
女房が、玄関先に置いている手作り淡水ミニ水族館(自家製ビオトープ)の水面を指差して僕に説明してくれる。
だけど、理科系にかなり弱い僕はすぐには理解できない。
よくよく、聞くと、先日、三川山(みかわさん・僕の住んでいる訓谷を流れる佐津川の上流にそびえている)一帯に、コケの調査にやってこられた皆さんが、うちに泊まっておられ、近所の水田から採取してこられたコケだという。
この見たこともない、1センチ足らずの浮き草のような植物、名前はイチョウウキゴケというらしい。
かっては日本全国どこでも見られたけど、急速に生育地が減って、絶滅が危惧されている、と専門家の方の話を女房はそのまま僕にしてくれた。メモをとっていた訳ではないから、正確には覚えておらず、名前が違うかも知れないけど、といいながら。
ネットで調べてみると、「イチョウの葉のような形のコケで、水田や湿地に・・」と書いてある。形をみると、当たっていそうである。僕は、頼りないけど。
それにしても、そんな珍しいコケがあるなんて、僕らが住んでいるこの地はなんと自然が汚されずに残っておるのだろう。うれしいな、と思い、二人でもっと探そうと、田んぼへ行ったけど、見つけることができなかった。素人の僕らでは、無理なんだろうな。
それで、代わりにというわけではないが、僕は小川でいっぱいメダカを捕ってきて、ミニ水族館に放した。
女房は、また、探しに行って、自分の目で、この貴重なコケを絶対見つけると、いまだにあきらめていない。