「台風で川が増水するかも知れません。イカダを揚げますのでお願いします」
朝、地区内放送で観光協会体験学習部長の声が流れた。
「イカダが流されるほど雨降るかなあ」
「それがわかれば苦労はしないけど」
「雨がふらないうちにやっちゃおう」
そんなことをしゃべりながら、みんなが集まるのを待って、堤防の方へ10基全部移動し、ロープで結んだ。
イカダは、自然学校や校外学習にやってくる小、中学生が乗って遊ぶ。
最近の子どもたちは、そんな体験することはまずないから、「ワイワイ、キャーキャー」と大はしゃぎで、とっても喜ぶ。
太い木や板で手作りしたイカダは、プラスチック製に比べると相当重く、大人の男4人でやっと持てるほどだけど、自然な感じは捨てがたい。
ご主人がもう出勤してしまった民宿では、女将さんたちが出て来て、男に交じって「よいしょ」とがんばって運ぶ。
「台風が過ぎ去ったらまた、元の場所へ戻しますから頼みます」
「はーい」
台風6号は、午後には日本海へ抜けるらしい。
大したことないといいな。